吉備津神社の参拝を終えてJR岡山駅に戻り、後楽園に行きました。
後楽園は、JR岡山駅から車で約5分のところにある日本庭園で、日本三大名園のひとつとされています。
江戸時代初期に岡山藩主の池田綱政が岡山城を造営しました。元禄文化を代表する庭園で、国の特別名勝に指定されています。
貴重な伝統建築が沢山ある中、今回注目したのは、庭園の中にある「流店 (りゅうてん)」という建物です。
色々と評価される建物が沢山ありますが、建築設計界では「流店」が注目されます。
「流店」は、城主が庭園の中で休憩を取るための建物で、水の流れの上に建物が建てられているのです。
何の変哲もない建物に見えますが、設計をする身としては、
- 庭園に水が流れている
- 水の流れの上に建物を置いている(逆に、水の流れを建物の中に引き込んだ)
- 柱のみで構成されていて、四周が開放されている
という現代日本では実現が困難なものを、無邪気な発想で、実現しているところに驚かされます。
現代日本で実現困難という意味は、地震国である我が国の建物は、地震に耐える建物でなければならないという前提で、木造建築はどうしても地震には弱点があるために、地震の揺れから耐えるための筋交 (すじかい) や 柱と柱を結ぶ板壁が必要となってしまいます。
そのようなものが一切なく、最小限の細い柱で支え囲われて開放されていて、その柱が庭の緑の額縁となって庭の眺望を楽しむように創られていることに魅力を感じます。
さらに、建物の中に水を引き込ませていて、その水面が庭園の中で常に同じ水量が流し続けられていることです。
参った日も、来園者が板の間で寝転び休んでいました。きっと江戸時代のお殿様も疲れた足の具足を脱いで水面に浸し、足の疲れが癒えるまで目は周囲の緑の絵画を眺めて疲れを忘れさせられたのかも知れません。